梅雨シーズンなど雨予報のときにタープ泊をするというのは、ハードルが高く感じるかもしれません。
通常、雨が降る中でのタープ泊といえば、多彩な張り方アレンジができるレクタタープ(レクタングラータープ)の方が向いています。しかし、張り姿の美しさで人気の高いヘキサタープしか持っていない、という人も多いでしょう。
そこで今回は、ヘキサタープしか持っていない方に向けて「雨の中でのタープ泊向けのアレンジ張り」を考えてみました。実際にフィールドに出て検証してみたので、イメージも湧きやすいかと思います。
また、それにあわせてタープ泊での雨対策9選もご紹介します。
「雨でもヘキサタープでタープ泊をしてみたい」と考えているソロキャンパーの方は、ぜひ参考にしてみてください。
なお、WAQでは火の粉や雨にも強いTC素材を使用したヘキサタープを販売しています。
ポール・ロープ・ペグなど、設営に必要な部品が付いてくるオールインワンタイプなので、部品を買い足さずにすぐ設営できます。ぜひこの機会に、公式ストアをチェックしてみてください!
雨の日ならではのタープ泊の楽しさを紹介
雨の降る中(とくに雨が多くなる梅雨シーズンなど)タープ泊をする場合は、雨の日ならではのよさを楽しまない限り、ただツライだけの思い出となりかねません。
そこでまず、雨の日ならではのタープ泊の楽しさをご紹介します。
雑音が消えて自然と向き合える
テントよりもさらに布地が少なく、より自然と密接した楽しみ方ができるタープ泊。その楽しさは雨の日にこそさらに増すものです。
シトシトと雨が降るフィールドでは、周辺キャンパーの物音なども聞こえづらく、雨音のみが支配する濃密な時間が流れています。
自然と向き合い、日常の雑踏から離れストレスから開放される「自分と向き合う」時間をぜいたくに味わってください。
夏場でも暑くない
風が吹き抜けるタープ泊といっても暑いのが夏場のキャンプです。
しかし、雨が降ったフィールドは地面の熱も適度に下がり、むしろ肌寒い気候になることも少なくありません。
キャンプの醍醐味である焚き火も、夏場のキャンプでは熱くて敬遠しがちですが、雨のタープ泊では焚き火の暖かさがかえって恋しくなるでしょう。
ハンモック&タープ泊は究極のミニマムキャンプ
テントを利用しないタープ泊は、荷物が少なくて済むというのがうれしいメリットです。
ナイロンやポリエステルなどの合成繊維素材の軽量化なタープを用意し、森などの立木を利用したハンモックでのキャンプスタイルにすることで、荷物を極限まで減らした究極のミニマムキャンプも楽しめます。
雨の日は虫の影響が少ない
夏場のキャンプの大敵といえば、蚊やアブといった虫たちです。
しかし、雨の日は彼らの活動も鈍ります。
キャンプは好きだけど、虫がきらいだから行きたくない、夏場のキャンプは避けたいと思っている人にとっては、むしろ雨のタープ泊こそ理想のコンディションなのではないでしょうか。
ヘキサタープの雨対策アレンジを紹介
タープ泊には、張り方のアレンジ幅が広いレクタタープを使うのが主流です。
レクタタープは長方形または正方形のシンプルな形状ゆえに、ステルス張りやピラミッド張りといった雨対策の張り方ができます。これだけさまざまなアレンジができるタープは他にありません。
ではその一方で、レクタタープと比べてアレンジのバリエーションが少ないヘキサタープでは、雨の中タープ泊をするのは難しいのでしょうか?
ここからは、ヘキサタープなりの雨対策アレンジ張りについて考えてみました。
今回考案したアレンジ張りは、次の4パターンです。
それでは、それぞれのアレンジ張りをみていきましょう。
なお、今回この実証を行うにあたっては、WAQ製のヘキサタープTC(M)を利用しました。
気になる方はぜひチェックしてみてください。
基本型からのアレンジ
まずは、一般的な張り方である基本型(メインポール2本使用)からのアレンジ張りをしてみます。
こちらの基本の型は、居住性と美しさの両方を兼ね備えた張り方です。しかし、この形ではこれといった雨対策も施されておらず、また就寝時には少々周りの目が気になってしまいそうです。
そこで下の条件に変えて、張ってみたいと思います。
- 左右のポールをWAQヘキサタープTC(M)付属のものから、別売の伸縮性ポールを使用
- 最大高を抑えソロ用コンパクトテントでよく見かけるポール長130cm
- ガイロープで引っ張っていた四隅のグロメットを、直接地面にペグダウンする
完成した形がこちら。
雨を完全に防げるわけではありませんが、風向きさえ考えれば両サイドからの雨はかなりの確率で防げそうです。
居住スペースも上の画像のとおり。中に設置したロータイプのコットを椅子代わりにして、ちょっとした焚き火や調理を行うスペースは余裕であります。
小雨ぐらいであれば、十分に雨対策を取ったタープ泊ができると考えてよいのではないでしょうか。
陣幕風アレンジ
続いて「陣幕風」張り方のアレンジを試してみましょう。
今回は下記の条件で張ってみました。
- 2本のメインポールから見て片側の幕体を垂直に地面に固定
- 反対側はサブポールで跳ね上げる
完成した形はこちらです。
片側からの風を遮断しつつ、もう片方をオープンに開けた陣幕風の張り方は、背中側の他者の視線も遮ることができます。シチュエーションさえ選べば、プライベート感を確保した張り方ができるでしょう。
雨の侵入が不安な場合は、
- 伸縮性ポールに変更
- 幕体の片側が地面に直接ペグダウンできる高さにまで下げる
上の条件に変更し、タープ本体の高さを下げると、雨の侵入もそれなりに防げるはずです。
同じく雨の侵入が不安な場合、上記の陣幕風アレンジからサブポールをはずして、ロープで引っ張る張り方もあります。
しかし、片側が地面に対して垂直になる陣幕風アレンジの場合、居住スペースが狭くなるので、あまりおすすめできる張り方とはいえません。
ステルス張りアレンジ1
レクタタープでの雨対策として有名なステルス張り。果たして、ヘキサタープでもステルス張りはできるのでしょうか?
結論からいうと、ヘキサタープでは、レクタタープのステルス張りほど雨対策が施された張り方をすることは不可能、といえるでしょう。
とはいえ「ステルス張りに近い張り方はできないものか」と思い、今回検証してみました。
まずは下の図をご覧ください。
今回の検証で使用しているWAQのヘキサタープTC(M)は、その他ブランドのヘキサタープと同様、少し細長い六角形(ヘキサゴン)をしています。
通常は、この左右の頂点にあたるグロメットにメインポールを立て、その他のグロメットをペグダウン、もしくはガイロープで引っ張って張ります。
しかし今回は、ステルス張りに近づけるよう、下記の条件で立ててみました。
- サイドにあたる2つのグロメット(図の下側)2ヶ所にポールを立てる
- その他のグロメットはすべて地面に直接ペグダウンする
完成した形がこちらです。
ポールは130cmの長さにしています。居住性に加え、今までご紹介した張り方と比べても、片側からの雨対策はできていると思われます。
全体のフォルムはパップテントのようにも見えますね。
後ろから見るとこんな感じです。
とはいえ、これだと雨対策は十分とはとてもいえず、ステルス張りのアレンジとしてもいささか心もとないといわざるを得ません。
そこで、次はポールの数を変えてみましょう。
ステルス張りアレンジ2
今回の検証で使用しているWAQヘキサタープTC(M)には「ステルス張りアレンジ1」で2本のポールを立てたグロメットの間に、もう1つグロメットがあります。
次は、このグロメットにポールを1本だけ立ててみましょう。完成した形がこちらです。
入口の1方向を除けば、雨の侵入もずいぶんと防げるようになったのではないでしょうか?
ちなみにこのときのポール高は、伸縮性ポールの最短である85cm程度にしてあります。
後方からのスタイルです。入口以外の雨対策はバッチリといえます。
ポール長を85cmという低さにしたことで、座って料理などをすることは難しそうですが、寝袋は余裕を持って広げられます。荷物を置くスペースも十分に確保できそうです。
あくまで雨が強いときの緊急避難的な張り方になるかもしれませんが、入り口は手持ちのレジャーシートやビニールで塞げば雨に濡れずビバークできそうですね。
ヘキサタープを使ったタープ泊の雨対策9選
続いて、タープ泊での雨対策9選を具体的に解説します。
どれも重要な対策ですので、万が一の事故などに合わないためにも、十分に理解した上で雨のタープ泊を楽しんでください。
1.雨の方向性を見極める
まず基本的なこととして、雨の方向性、つまり風向きを見極めることが必要です。
とくにヘキサタープの場合は、レクタタープのようにフルクローズの張り方はできません。雨風の方向を見誤ると、悲惨な一夜を過ごす可能性もあります。
風向きの変わりやすい山などでは、風向きをチェックできる専門サイトなどを利用して、転ばぬ先の杖として用心することをおすすめします。
現在地の風向きがリアルタイムで視覚的にわかる「Windy」というサイトが便利です。風向きだけでなく、最大瞬間風速や風の強さ、雨や雲・気温・雷などもチェックできるので、キャンプのお供におすすめです。
【スマートフォン用アプリ】
2.地面の凹凸を見て水たまりを避ける
風による雨の方向を見定めるとともに、地面の状況をよく観察するのも、雨のタープ泊を楽しむための対策です。
地面の凹凸によって特定の場所に水たまりができたり、水の流れが生まれたりしてしまいます。
「設営時は雨が降っていなくても寝ている間に雨が降り、地面が水浸しになっていた」という可能性もあります。水たまりのできそうな場所は避けておきましょう。
3.風が強いときは諦める勇気を持つ
多少の雨であれば、十分な雨対策をすることでタープ泊を楽しめます。しかし、少しでも判断を誤ると、楽しいはずのキャンプが悲惨な思い出になりかねません。
自然の影響をダイレクトに受けるタープ泊では、最悪の場合だと命の危険すら伴ってしまいます。
これはやばいかな?と感じるような強い雨風のときは「思い切って撤収する」「諦める勇気を持つ」ことがもっとも重要です。
4.張り方を工夫する
張り方の工夫をすることも、タープ泊の雨対策としては大切です。
できる限り地面とのスキマをなくすように張ることが、まず第一の雨対策となります。
ヘキサタープの場合は、張ったときに美しくかつ効率的にテンションがかかるように湾曲したデザインになっていることが多いでしょう。
地面とのスキマをなくすためには、たとえデッドスペースが生まれたとしても、地面に横たえる感じでの設置をしなければなりません。
5.設置面沿いに溝を掘る
雨量が多いときは、タープ本体から流れ落ちた雨がタープの端から内部に入り込まないように、設置面の周辺に溝を掘り低い地面に向かって流すのも1つの方法です。
下の画像のように、タープと地面の設置面周辺である赤ラインを入れた箇所に、溝を掘るイメージです。
ただし、管理されているキャンプ場などでは、許可なくキャンプサイトを掘り返すのはあまり褒められた行動とはいえません。実際にやる際にはキャンプ場の利用規約を読むか、管理人への確認を忘れないように注意してください。
6.夏場でも寒さには注意
キャンプ場の多くが山などの高地にあり、夜間は冷え込むことも少なくありません。とくに長時間にわたり雨がふったときなどは、地面の熱も奪われ、夏場でも地面から底冷えする可能性すら考えられます。
そのため雨の中でタープ泊をする際は、地面にシートや薄手のマットを敷くよりも、厚手のウレタン入りインフレーターマット(インフレータブルマット)や地面から距離が取れるコットを利用するのがおすすめです。
また、テント泊のように風の侵入を完全に防げないため、寒いと思ったときに羽織れるアウターを1枚持っていくと安心です。
7.虫・動物対策
タープ泊は、テント泊や車中泊と違い、自然と自分のスペースを遮るものがありません。
そのため、虫の活動が鈍くなりやすい雨の日でも、蚊やアブといった虫や野生動物などのリスクは頭に入れておく必要があります。
虫や野生動物による被害を避けるためには、次のような対策をしておきましょう。
- ポップアップメッシュテントとコットを合わせて使う
- 就寝時のみ自立型インナーテントを使う
- 食材やゴミは必ず蓋のある入れ物(できればハードクーラーなど)に入れる
- 野生動物が出る可能性のあるキャンプ場はなるべく避ける
8.レインウェアを用意する
雨のタープ泊でのもっとも基本的な対策は、雨に適したレインウェアや長靴などを用意しておくということです。
レインウェアを着ることで、設営・撤収時に体が濡れるのを防げるので、体温が奪われにくくなります。寒くて眠れないときなどのアウターとしても活用できて一石二鳥。
また、足元が濡れるのを防いでくれる長靴は、ハードな防水加工が施されたアウトドアシューズよりも性能が勝ります。
自宅から長靴で行くことに抵抗がある人は、コンパクトにたためるアウトドア用のレインシューズや、靴の上にかぶせて利用できるシューズカバーなどを用意しておくといいでしょう。
9.荷物にも雨対策をする
荷物にも雨対策は施しておきたいところ。荷物用スタンドを用意して地面から離して保管しておくのもおすすめです。
専用の高価なスタンドなどを用意しなくても、折りたたみ式シューズラックを流用するなど、アイデア次第で快適な雨のタープ泊を約束してくれます。
今回の撮影で使用したWAQのヘキサタープのおすすめポイント・他社商品との比較・みんなの口コミなどは、以下の記事で詳しく紹介しています。
「WAQのヘキサタープが気になる」「どんなタープなのかもっと知りたい!」という方は、ぜひご覧ください。
まとめ
今回は雨に対応した張り方のアレンジを試しましたが、まだまだ雨対策に有効な張り方アレンジはあると思います。これを読まれているあなた自身でも、いろいろとアイデアを絞って、ヘキサタープでのタープ泊にチャレンジしてみてください。
ただし、あまりに雨や風が強い日は、命の危険性すらあるのが自然を相手にしたキャンプという遊びです。「雨風がひどい場合は撤退する勇気を持つ」ということが、もっとも重要な雨対策であることを忘れずに、快適な雨のタープ泊を楽しみましょう。
雨以外の晴天時におけるヘキサタープのタープ泊向きの張り方については、こちらで詳しく解説しています。あわせてこちらもご覧ください!