テントやタープを固定するために欠かせないアイテムのペグ。最初は、テントやタープに付属されているプラスチック製やアルミ製のペグをそのまま使うことが多いかもしれません。
しかし、石が多かったり硬い地面だったりと、さまざまな状況のフィールドに出かける機会が増えると、機能面で力不足と感じることも。
万が一、風にあおられてペグが抜けて飛んでしまうと、最悪の場合ケガや事故につながる可能性もあります。
フィールドの状態にあわせたペグ選びは、安全面においても重要なポイント。
今回は、ペグに関する基本的な知識・ペグの種類・地面の状況に合わせたペグの選び方などについてご紹介します。
基本的な知識
ペグとは


テントやタープを設営するときに使うガイロープを、地面に固定する道具のことを言います。テントやタープを設営する上では欠かせない重要アイテムです。
ペグが抜けるのはとても危険
ペグは、抜けにくいものであることが絶対条件です。ペグの抜けやすさは、素材・形状・ペグ自体の長さによって変わります。
ガイロープにつながれたまま抜け飛ばされてしまうと、凶器になることも。怪我や事故もなく楽しいキャンプをするためにも、抜けないようにしっかりとペグダウンする必要があります。
状況に応じて使い分けるのがポイント
キャンプ場の地面強度や土質に合わせて、数種類のペグを用意して使用するのが一般的です。
テントやタープを購入したときの付属品として、プラスチック製やスチール製のペグがついてくることが多いですが、硬い地面だと強度不足が気になることも。
地面にあったペグを買い足した方が、ペグ自体も長持ちし、テントやタープなどの倒壊を防ぎ安全を確保するための一番の方法となります。
ペグの種類|形状ごとに解説
ペグには種類ごとにさまざまな特徴があります。それぞれの特徴を押さえ、用途に応じて使い分けましょう。
V字・U字ペグ


ペグの断面がV字またはU字の形状のため抵抗に優れており、他のものに比べて抜けにくいのが特徴です。アルミ製やスチール製など、使われている素材はさまざま。
抵抗に強く抜けにくいため、柔らかい地面での使用に向いています。製品の素材によっては固い地面にも使うことのできるオールマイティーなペグといえるでしょう。
デメリットとしては、溝部分に土がつきやすいため、使用後は水洗いで泥を落とすなど、入念なお手入れが必要です。
X字・Y字ペグ


ペグの断面がX字もしくはY字の形状をしています。V字・U字ペグより抜けづらく曲りにくいという特徴があるため、柔らかい地面と硬い地面の両方に使えます。
ただし、重ねてコンパクトに収納できないため、かさばってしまうのがデメリットです。
V字・U字ペグ同様、溝の部分に土がつきやすいため、水洗いでのお手入れがいります。
ピンペグ・丸型ペグ


ヘッド部分がフックや丸い形状になっているものを指します。テントやタープの付属品として備わっている、最もスタンダードなタイプです。
他の種類と比べると、接地面積が小さいため、汚れにくいといった特徴があります。
一方、アルミ製のものが多いため強度が低く、石が多い硬い地面などではペグ先が曲がってしまう可能性があります。
ネイルペグ


ネイルとは英語で「釘」を指します。名前の通り、ペグ全体が釘の形状をしているのが特徴です。ヘッド部分が平たい形をしているためハンマーで打ちやすく、硬い地面でもペグダウンしやすいため、初心者向けのペグといえます。
材質はスチール製のため、丈夫で長持ちしやすいオールラウンドに使えるペグです。
鍛造(たんぞう)ペグ


鍛造ペグは、現在販売されているペグの中でもっとも性能が良く、他のペグを圧倒する頑丈さと重さなのが特徴。
打ち込み中に石にぶつかったとしても砕いてしまうほどです。ほぼすべてのキャンプ場で威力を発揮するため「迷ったときはこれを選べば間違いなし」といえるでしょう。
他のものに比べて価格が高く、また重量もそれなりにあるのがデメリットです。
ペグの素材の違いもチェック


続いて、ペグの素材の違いについても詳しく見ていきましょう。
プラスチック(プラペグ)


プラスチック製のペグは、安価であることが特徴です。
強度が低いため硬い地面での使用は厳しめ。逆に、柔らかい地面や砂浜での使用に最適です。砂浜でテントの設営をするなら持っておきたいペグです。
プラスチックのため金属製のハンマーだとペグを破損する可能性があります。
スチール


スチールペグは主にテントとセットでついてくることが多め。強度に優れているのと軽量なのが特徴で、固い地面でも使用できます。
柔らかい地面にも対応できますが、砂地の場合は抵抗が弱いため不向きといえるでしょう。
ステンレス


ステンレス製のペグは、錆びづらく、塗装が剥げにくいといった特徴があります。強度もあるため、多少荒々しく使用しても問題ありません。価格は比較的高めです。
アルミ


抜群の軽さで、持ち運びに適したペグです。
強度はやや低めで曲がりやすいため、芝生のような硬すぎない地面向き。価格も安いため、初心者でも手が出しやすい素材です。
チタン


比較的軽量なため、持ち運びに適したペグです。おまけに、強度が非常に強いため、硬い地面でもペグダウンしやすいといった特徴があります。
錆びにくいという最大のメリットも。しかし、高性能ゆえに価格が比較的高いのがデメリットです。
ペグは地面の状態や地形にあったものを使い分ける
ペグを選ぶときは「どのようなな地面で使うのか」を基準にします。
地面の種類には大きくわけて「砂浜・雪」「柔らかい地面」「硬い地面」の3種類あります。
それでは、それぞれの地面にあったペグの種類をみていきましょう。
砂浜や雪の場合
ペグダウンしにくい砂浜や雪には、プラスチック製で40cmほどの長いペグが最適です。
地面に対して接地面積が広い、
- V字・U字ペグ
- X字・Y字ペグ
が向いています。
地面との接地面積が広い分、安定性に富んでいるため、柔らかい地面ではとくに重宝します。
砂地専用で販売されている「サンドペグ」や、ねじ込み式の「スクリューペグ」を選ぶと、間違いありません。


芝生などの柔らかい地面の場合


芝生の生えているフィールドなど土が柔らかい地面には、
- ネイルペグ
- 鍛造ペグ
が最適です。
とくにネイルペグは、ハンマーでペグを打ち込む際に力が伝わりやすいため、しっかりペグダウンできます。
その他、形状としては、抜けにくいX字・Y字ペグや、V字・U字ペグがおすすめです。
硬い地面の場合


硬い地面には、頑丈で強度の高い鍛造ペグやチタンペグが適しています。
ペグの強度が低いと、ペグダウンの際に折れてしまったり地面の途中までしか打てなかったりと、きちんとペグダウンできない可能性があるため注意しましょう。
以下の記事では、ペグの強度不足によるテント崩壊など、キャンパーが実際に体験したキャンプでの失敗エピソードを紹介しています!ぜひこちらも合わせてご覧ください。
>>キャンプのあるある失敗談【キャンパーに聞いてみました!】


鍛造ペグとチタンペグ、どちらが最強?
鍛造ペグとチタンペグ。どちらも頑丈で強度が高いのが特徴ですが、どちらの方が最強なのでしょうか?
それぞれの特徴を比較した結論からいうと、チタンペグの方が最強といえるでしょう。
理由は次の3つです。
とにかく軽い
鍛造ペグが1本あたり200g前後の重量であるのに対して、チタンペグは1本あたり70g前後。1本だけでもおよそ130gもの重量差があります。
軽くて持ち運びしやすく、扱いやすいのはチタンペグといえるでしょう。
とにかく強度が強い
強度の強さで定評のある鍛造ペグであっても、ある程度の負荷をかけると曲がってしまいます。
一方で、チタンペグは鍛造ペグより強度が高いため、負荷をかけても曲がりにくい特徴があります。
石などが多く硬い地面ほど、チタンペグの方が重宝するでしょう。
とにかく錆びない
チタン素材は錆びに強いため、使用回数を重ねても錆びる心配がいりません。
ペグダウンしたペグは必ず汚れるため、水分が付着します。鍛造ペグは付着した水分の影響で錆びる可能性があります。
長持ちするといった点でも、チタンペグは優れているのです。
スチールペグと鍛造ペグの違い
丈夫で硬い地面に最適な、スチールペグと鍛造ペグ。この2種類のペグの違いは、以下3つです。
重さ
重さに関しては、スチールペグより鍛造ペグの方が重量があります。登山キャンプなど、持ち運びを重視したい場合は、スチールペグの方が最適です。
強度
スチールペグと比べて、鍛造ペグの方が強度は高め。硬い地面にペグダウンする際には、鍛造ペグの方が適しています。
適応する地面
鍛造ペグは基本的に硬い地面にのみ適したペグです。一方、スチールペグは、硬い地面はもちろん柔らかい地面にもある程度対応しています。
適応範囲が広いという点においてはスチールペグが優れていると言えるでしょう。
キャンプに必要なペグの長さ
ペグは長ければ長いほど抜けにくくなります。しかし、長くなるほどサイズも大きくなり重くなるため、設営にかかる手間が増えます。
設営の手間を考えると、必要十分の長さがあればOK。一般的に15cm〜40cmのペグが使われています。
テントに使うか、タープに使うかで適切な長さは異なります。目安は下記の通りです。
- テント用の場合
-
20cm程度あれば十分。風で飛ばされない程度でOK。
- タープ用の場合
-
テント設営時より長い30〜40cm程度が最適。風の力に十分耐えられるようにする。
ただし、地面の状態によっても抜けにくさが変わってくるため、状況に応じて使い分けてください。
キャンプに必要なペグの本数


ファミリータイプの大きなドームテントなどには最低16本。小規模なソロテントの場合は、最低でも8本程度あれば十分です。
タープを設営する場合は、8本あれば問題ありません。
ただし、テントやタープ設営に必要な本数は、モデルや大きさによって変わります。購入予定のテントやタープに必要な本数をあらかじめチェックしておきましょう。
ペグの破損や紛失・強風時など、不測の事態に対応できるよう「設営に必要な本数+α」で持っていくと安心です。
ペグハンマーは必要?


ペグを打ち込む際に使うペグハンマー。ペグダウンに慣れていないキャンプ初心者の間は、ペグハンマーがある方が便利です。
ここでは、ペグハンマーを持っていくメリットと持って行かないデメリットをご紹介します。
持っていくメリット
ペグハンマーはペグのさまざまな形状に対応できるよう、打撃部が広めにとられています。
ペグ打ちに慣れていない初心者でも、ペグが打ち込みやすいというメリットがあります。
持っていかないデメリット
ペグハンマーを持っていかないと、ペグを抜く際に一苦労することも。ペグの形状によっては、ヘッド部分が手で掴みにくく、なかなか抜けないと可能性もあります。
ペグハンマーには、打撃部の反対方向に、ペグを引き抜くための突起部分があります。この突起をペグに引っ掛けることで、手で引き抜くよりもかんたんかつ楽に抜き抜き取れるのです。
この引っ掛け部分を使うか使わないかによって、テントやタープの撤収時間も大きく変わります。ペグ抜き作業のコツなどが掴めていない初心者の間は、ペグハンマーがある方が安心です。
ペグハンマーの正しい打ち方


ペグハンマーでペグを打つときのポイントは、次の2つです。
- 打ち下ろすときだけグッと力を入れる
- ペグに対して真っ直ぐの方向に打つ
ヘッドの重さだけで十分ペグダウンできるため、ほとんど力を必要としません。ムダな負荷が掛からないため、手が疲れず最小限の力でペグダウンすることができます。
最初からグッと力を入れてハンマーを打ち下ろすと、手が疲れるため、コツを押さえておきましょう。
ペグを打ち込む正しい角度
ペグを打ちには、正しい角度があります。打ち込む角度によってテント設営の時間や強度などが大きく変わるため、注意しておきましょう。
ロープとペグの角度は90度、地面とペグの角度は45〜80度


ロープとペグの角度はおよそ90度になるのが最適。直角になることで、テントやロープに衝撃が加わっても抜けにくくなります。
地面とペグの角度は45度〜80度がベストです。強風が吹いても、ぐらつくことなく安心してキャンプを楽しめます。
NGな打ち方
ロープに対して同じ角度でペグを打ち込むのはNG!ロープに負荷がかかった際、ロープが抜けやすくなります。抜けたペグが風に煽られて凶器となり、ケガをする可能性もあるため要注意です。
また、ペグに対して斜めにハンマーを打つと、ペグが曲がってしまい、地面に刺さりづらくなってしまうので注意しましょう。
ペグを打ち込むときのポイント
ペグを打ち込むときは、フィールドの状況に合わせて臨機応変に対応しましょう。
地面が柔らかい、風が強いときは
地面が柔らかい場合、正しい角度や方法でペグを打っても、ペグ抜けが起きる可能性があります。そのような場合は、以下の方法でペグの強度を上げることができます。
クロス打ちにする
1本目のペグを打ったあと、2本目のペグをクロスするように(X字になるように)ペグダウンしましょう。1本目に打ち込んだペグを2本目で固定する、というイメージです。
必要なペグの本数が増えますが、かんたんにできるのがメリットです。
ペグを2本打って、ロープからの力を分散させる
一般的な「1本のロープに対し、1本のペグで固定する」方法は、安定性に欠ける側面も。


1本のロープに対して2本のペグを打ち込んで、三角形を作るイメージで力を分散させると、安定性がアップします。
近くにある大きい石などを重りにする
ペグダウンしたあと、近くに落ちている大きめの石を重りとしてペグ部分に置く方法もあります。
車を横付けできるキャンプサイトの場合は、車のホイール部分などにガイロープを巻き付けて固定させるのもおすすめ。
重量のあるものをうまく活用することで、ペグ抜けの可能性も低くなります。
ペグダウン時、石にあたるときは
ペグダウンの途中で石に当たってしまった場合は、一旦ペグを抜いて、位置を変えて再びペグダウンしてみましょう。
位置を変えず石に対してそのままペグを打ち込んでしまうと、ペグが傷付き、破損したり曲がったりする可能性があります。
ペグを抜くときのコツ
ペグ打ちと同じく、ペグ抜きにはコツがあります。
ペグを強く打ちすぎたせいか「引っ張っても引っ張ってもペグが抜けない」といったように、地面に埋もれて抜けない場合でも、コツを掴めばかんたんにペグ抜きできます。
ペグが地面から抜けないときの対処法
ペグと地面にスキマを作る
ペグのヘッド部分を手で掴み、少し力を入れてぐるぐる回してみてください。そうすることで、ペグと地面の間にスキマができます。このスキマができれば手で掴んで引き抜くだけで、かんたんにペグ抜きができるはずです。
ハンマーで叩く


ペグと地面の間にうまくスキマが作れず抜けない場合は、ペグのヘッド部分を横からハンマーで軽く叩いてみましょう。
そうすることでペグと地面の間にスキマがしっかりでき、ペグが抜けやすくなります。注意点は、あくまでも「軽く」ハンマーで叩くことです。
力を入れ過ぎると、ペグが曲がって破損する可能性があります。
地形や用途に合わせた正しいペグの選び方・扱い方を実践しよう
ペグといってもさまざまな素材や形状があり、使用用途もばらばら。
砂浜などの砂地にはプラスチックの専用ペグ、硬い地面には鍛造ペグやチタンペグといったように、フィールドの状況に合わせて数種類のペグを使い分けるのが鉄則です。
ペグダウン時の角度やペグ抜きのコツなども大切なポイント。ペグに関する知識をしっかりと身につけ、楽しく安全にキャンプを楽しみましょう。
安全なキャンプを楽しむためにも、強風時のタープ設営のコツも押さえておきましょう。こちらでは、風に強いタープ設営の手順を、画像付きで解説しています。

